晴れ女ってつまり魔法使いみたいなものじゃない?

私の母は晴れ女だ。
母は旅行が好きでよく行くが、行く先々いつも晴れている。霧の摩周湖は雲ひとつなく晴れわたり、台風が来ていた沖縄も何故か快晴、彼女が旅をすると梅雨前線も全て無視している。旅行アルバムの空はいつも青空だ。

偶然晴れとかじゃなく、もはや自分のエネルギーの力で晴れにしている感じがする。思い込みの力。太陽崇拝。そういうスピリチュアルな魔力すら感じる。
それを体験した話をしようと思う。

母とスイスに旅行に行った時のこと。
スイスは両親の新婚旅行の場所で、母は本当に楽しみにしていた。
「スイスのグリンデルワルトでスキーをしたの。目の前にアイガーがあって、景色が綺麗で本当に最高だったよ!」というのを、酔っぱらうといつも母は話していた。
いつも話すので私や姉たちは半ば流しながら聞いていたが、母の目はいつも輝いていた。毎回毎回飽きもせず、その感動を何度も思い起こしながら。
今やいちゃいちゃする姿も想像できない両親が、甘い新婚旅行を過ごしたであろうスイス。
唯一の共通する趣味を思い切り謳歌するために選ばれたスイス。
快晴続きで人生最高の時間を過ごしたスイス。

再びこの地に来たからには、何がなんでも絶景を我が子に見せたい!!
彼女は強い意思を持っていた。

私たちは両親の懐かしの地グリンデルワルトに泊まり、翌日ユングフラウ鉄道で標高3,451mのスフィンクス展望台へと行く予定だった。スフィンクス展望台からはアルプスの明峰ユングフラウアレッチ氷河・メンヒが見え世界の絶景と言われる場所だ。

ただ、問題があった。グリンデルワルトに到着した時点で雨が降りだした。ホテル近くのお土産屋さんで買い物終わりに、母は現地の人に拙い英語で明日は晴れるかと尋ねた。答えはノー。ガイドさんに聞いても雨雲が出ていると言われた。
明らかに落ち込む母。夜になるほど雨は強くなっていた。

夜中ふとトイレで目が覚めた。窓の方を見ると、母が立っている。雨の音で起きてしまったようだ。
母は窓の外を見ながらずっと晴れろ・晴れろと念じていると言っていた。恐ろしいほどの執着心。夜中に外を見ながら念じている母。私はさっさと用を足し、ベットですぐに寝た。

翌朝、雨は止んでいた。母は大喜び。
私は嬉しい気持ちと夜中の母を思い出しては、この人の念は天気を操るんだな、と思った。それは魔法使いみたいだと思った。

晴れ女と言われる類の人は、実は魔法使いなんじゃないかな?
大抵、晴れ女とか晴れ男っていう人々は明るく元気でエネルギーに満ち溢れている。そして、これと決めたことは突き通す強さがある人が多い。
そんな強い念やらエネルギーやらによって、天気すら変わる。松岡修造が日本にいると気温が上がり居なくなると寒波が来るってのが昔流行ったけど、それって本当にあるんじゃないかな。
彼らが晴れ女・男になるのには、必然的な理由があるんだろう。

あ~あ、私も晴れ女になって魔法使いたーい。